1、死後離縁とは
2、死後離縁が認められるとどうなるの?
3、死後離婚との違い
4、死後離縁の手続きの流れ
5、さいごに
1、死後離縁とは
養子関係は、婚姻関係と異なり、養親又は養子が死亡した後でも養子関係を終了させることができます。この手続を死後離縁といいます。
死後離縁は通常の離縁の手続きとは異なり、裁判所の許可が必要になります。
2、死後離縁が認められるとどうなるの?
(1)親族を扶養する義務の消滅
法律上、養子の方は養親の直系血族(祖父母、父母、子、孫など)、兄弟姉妹について扶養をする義務があります。
しかし、離縁が成立すると養親との親戚関係が終了するため、上記扶養義務が消滅します。
したがって、離縁後に元養子の方が元養親の親や実子が年老いて介護が必要になった場合に、扶養をする法的な義務はありません。
(2)養子の復氏
離縁をすると養子の姓が縁組前の姓に戻ります。例外として、養子縁組から離縁まで7年が経過しており、かつ、離縁の日から3ヶ月以内に役所に届出をすれば、離縁後も養親の姓を名乗ることができます。
離婚の場合とは異なり、7年といった期間の条件がありますので、注意が必要です。
(3)相続関係
相続関係については、亡くなった時点の相続人を基準とするので、死後離縁が成立しても相続人の地位はなくなりません。
以下の例を考えてみましょう。
養親:A子さん
実子:B男さん(A子さんの実子、独身で子供はいない)
養子:C男さん(令和元年12月1日にA子さんと養子縁組、独身で子供はいない)
A子さんが令和4年1月1日に死亡し、C男さんが同年2月1日に死後離縁した場合、離縁が成立しても相続人の地位は変わりません。
よって、A子さんの相続では、B男さんとC男さんが相続人となります。
しかし、離縁後に親族の相続が発生した場合には影響があります。
先程の例で、その後3月1日にB男さんが死亡した場合には、C男さんは2月1日に離縁しており、B男さんとの親族関係が終了しています。
したがって、B男さんの相続では、C男さんに相続権はありません。
3、死後離婚との違い
配偶者が死亡した場合に、死亡した配偶者の親族(姻族)との関係を終了する「死後離婚」という手続きがあります。
正式には、「姻族関係終了届」を役所に提出し、死亡した配偶者の親族との関係を法的に終了する手続きです。死亡した配偶者と離婚することはできません。
死亡した当事者の親族との関係を終了するという点で死後離縁と似ていますが、家庭裁判所の許可は不要です。
4、死後離縁の手続きの流れ
大まかに①家庭裁判所への申立 ②確定証明書の申請 ③役所への届出の三段階の手続きがあります。
①家庭裁判所への申立
まず最初に家庭裁判所への申出が必要になります。
亡養子との離縁の場合は養親、亡養親との離縁の場合は養子が申出人になります。
申立をする家庭裁判所は、亡くなられた方ではなく、申出人の住所地の家庭裁判所なので注意が必要です。
一般的な申立書類としては、家庭裁判所指定の申立書、養親、養子の戸籍が必要になります。
②確定証明書の申請
家庭裁判所への申出をした約1ヶ月後に、申立人に結果の連絡(審判書の謄本)が届きます。法律上は、審判の日から2週間は他の関係者が異議を申立てることができる関係上、審判書が届いたとしても、審判が確定していません。
したがって、審判の日から2週間経過後に家庭裁判所に「確定証明書」といった書類を請求する必要があります。
③役所への届出
家庭裁判所の手続が終わっても役所に自動的に届出がなされるわけではありません。
ア)①で取得した審判書謄本
イ)②で取得した確定証明書
ウ)役所指定の届出書
上記ア~ウの書類を申出人の住所地又は本籍地の役所に提出する必要があります。
また、届出の際には、成人2名以上の証人の連署を必要とするため、予め準備をしておく必要があります。
5、さいごに
相続発生後、養親の負債が多く、死後離縁をすれば相続をしなくて済むといった誤解がされることも多いですが、相続人の地位に影響はありません。この場合は、相続放棄という手続きを検討する必要があります。
相続放棄は相続の開始日より3ヶ月の期間制限がありますので、お早めにご相談下さい。
また、家庭裁判所の許可が必要な以上、必ず死後離縁が認められる訳ではありません。
例えば,遺産を相続しながら,養親又はその親族に対する扶養義務を免れるために死後離縁をする場合等は、家庭裁判所が許可しない可能性が高いです。死後離縁を検討する場合には、相続財産を取得しないといった措置を取る必要があります。